商号の由来
当店の商号 |
商号の由来
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山本勝之助の生涯
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手廻しせねば雨が降る
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「雨」は自然現象であって我々の予期し得ないものである。雨が降れば急ぐ仕事の処理も不可能になる場合もあり、その結果約束も果たせず相手に多大の迷惑をかける上、自己の信用をなくすこととなる。 凡そ商人は信用こそ最大の資本と言え、雨こそ商人には一大凶事であり死を意味するものである。商経営に当たる者は常時雨降る日のあることを強く念頭に置き、日々の仕事の計画を立てて段取りよく手廻しすることに心がけ、相手に対して違約による迷惑と不信を招かぬよう心することが商業道徳上の最大責務である |
2枚のビラ
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「これ上げますよって、読んでみなはれ」
雑誌を読んでいた私の鼻の先へ何やら印刷したビラを突きつけた老人がいる。さっきから車内の誰彼なしに紙切れを配っては歩いていた、色の白い上品な顔に頭巾を被った老人だ。 車内の物売りだろう位に決めていた私は、いざ自分にも突きつけられてみると知らん顔をしているわけにはいかぬ。ビラと老人の顔をチラチラ見比べている眼に“御大典記念”の五字が映った。さては、一種のファナチックかなと思って更にビラを見ると、この老人の筆跡ででもあろう“手廻しせねば雨が降る”と大きく印刷してある。思わず「お爺さんこれは何ですか」と訊いた「ほんならこっちゃのをもう一枚あげますよって、まあ読んでみなはれ」とその老人は黒い手編みの手提げ袋から別の細長いビラを一枚出してくれた。こうなっては仰せに従うのほかはない“求めよさらば与えられん”というようなわけで金を儲ける秘訣、成功の秘訣はつまり「手廻しせねば雨が降る」ということであるらしい。確かめたら老人はそうだとうなずいた。何というても貯金する人最後は勝利又国強しというようなことから、もう一枚の方には、成功する人はどういう人、成功せぬ人はどういう人というのを三、四十項目づつ書き並べている。そして「只一二ヶ条ニテモ修身実行スレバ成功疑ナシ」どころか正に聖者であろと思われる。・・・
語るこの昭和三年来の“精励爺さん”は和歌山県海草郡巽村の山本勝之助老で、文久二年の生まれ、鶴のように華奢だが、今日もケシぼうずを買出しに行く途中とかで元気なものである。由来海草郡那賀の両郡は漁具用棕櫚縄の生産では明治初年来有名な所で、年産百六十万円に上り有力な農家の副業となっている。山本老が“手廻し”して当てたのもこれであった。事変になって軍需方面にもはけるので棕櫚縄の値は騰がったし、遊んで暮らせる楽隠居の身分ではあるが、ビラを配りながら寸暇を惜しんで飛び廻っている。・・・
以下略 |
祖父の想い出
祖父が亡くなったのは確か私が中学校二年の夏の終わり頃であった。どの様な人柄であり、どんな考え方を持っていたのか、私には判らない。せめて私が二十才になるまで生きて居て貰いたかった様な気がする。今思い出しても只無闇に口喧く叱言を言う人であったという印象だけである。
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